死を見つめる者


ならば、私は殺られる側ではなく後者――――――にもならない。
どうして、私が手を汚さなきゃいけない?
そんな二択は認めないよ。

生きているものは絶対に死ぬのなら、
さっさと死ねばいいのに。
みんなみんな、気に食わないし。

死ねば?
うん、看取ってあげる。
だから、安心して逝っていいよ。
世界中の全員の死に立ち会いたいの。

私の価値は万人の死を記憶すること。
あ、もう十二時を過ぎちゃった。
今日も百人足らず、か。

最近の医療はすごいねー。
ちょっと前までなら、絶対死んじゃうなーって人も今では生きてられるんだもん。
意識は無いかも、だけどね。
私としては、大した変化は無いんだけど。
ま、最近では、絶命しない人の断末魔にも立ち会うんだけどね。
意外といいものだよ?
人の、人としての終わりを見るのも。

一瞬で壊れるのも一興だけど、じわじわ逝くのを見るのも、また一興だよ。
特に最近はまっているのがね、水死。
何より見つめているのが楽しかった。
ぶくぶくぶくって、ね。
目が、見開くの。
水で痛いはずなのに、助けてって目が訴える。
こっちを見て、訴える。
私の姿は見えないけどね、何かを感じるみたい。
だって、こっちに手を伸ばしてくるんだよ?
手を伸ばして、私を掴めずに、水中を掴むの。
それで、助けて、って言うんだよー。
あ、もちろん声は出てないんだけどね。
楽しいでしょ?
人は皆、いつか死ぬ運命なのに、手を伸ばして「助けて!」だって!
笑えるよね?
え?
笑えない?
私は楽しいと思うけどなー。
え、他に面白いものは無いかって?
んー後は、事故死かな。
人が死の瞬間。
ビクッ!ってなるのを見るのも好き。
え?良く判らないって?
じゃ、一度でいいから試して見たらどう?
簡単だよー!
自転車に乗って、ヒョイって自動車の前に出て見るの。
出た後には、ちゃんと直ぐに車の方を見てね?
そしたら、たぶん、ビクッてなる。
え?
危険じゃないかって?
……うん、そうだね。


もしかしたら――――――私もそこにいるから。


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