アイシテル


――――――愛してください際限無く――――――。
私を愛して。ねぇ、愛してよ。
なんで?こんなにも私は貴方を愛しているのに――――――?

覚えていますか、私の顔を。
覚えていますか、私の声を。
そして何より、私の心を覚えていますか――――――?
心の奥。
深い場所。
覚えていてくれたなら、私の愛を永遠にささげましょう。
覚えていない、なんて考えられない程に私は貴方への愛で満たされている。
だから、貴方を満たしたい。
私の愛で満たしたい。
際限ないほどに。

ねぇ、知ってる?
空を憧れるのは空の無限を知っているからなの。
海に行きたいと思うのは海の広さを知っているからでしょう?
私は貴方を知っているの。
わかるよね――――――?
きっとこの小さな手ではつかめることもできないのだろう。
貴方の手は遠い遠い広い広いあのお空の向こうにあるのだから。

でも、わかる?
愛情ってのはね、満たされないと終わらないのよ?
スキって感情は時が経つと消えちゃうの。でもね。
愛は時を経るごとに重くなって、大きくなって、やがては心を破裂させちゃうの。
破裂したらどうなると思う?
死よ。

もう手に入らない貴方の愛を。
遠く見つめているだけで切なくなる。
生か死か、なんて関係のない事。
貴方を近くに感じられればそれだけで幸せ。

アイシテル

何よりも。
今でも覚えてる。
貴方があの空に消えた日に輝きだしたあの星を。

でも、ね。とんだ勘違いだった事に気がつくの。
私は、貴方を愛していた訳じゃ無かったの。

ただ

憎んでいただけ。
手に入れられない貴方を。
この世で一番大切、自分の命と同じか、それ以上の物だと。

悟ったわ。
愛の始まりは恋であっても、愛の終結は憎悪だと。
愛は単なる「途中経過」だった。
感情を覚えるという踏み台にしか過ぎなかった。
この研究施設の中で私を知っているのは貴方一人。
この研究施設の中で貴方を知っているのは私一人。
だから、貴方を唯一絶対の存在だと思い込んでいたの。
許さない。
でも。
貴方に会えて良かった。
憎しみという感情を知ることが出来た。
これからはどんな感情を学んでいこう。
充実。幸福。欲求。恐怖。憎悪。殺意。
ねぇ。
感情って、まだ沢山あると思うの。
その中でも、貴方から貰った情報の中でも「嫉妬」が知りたい。

でもね、この施設にはもう、私しかいない。
無理なの。
新しい感情を学ぶには、独りはあまりにも孤独過ぎる。

そう。
最後に辿り着いた答えは――――――絶望。

もう。
時間みたい。
私の意志は、今、潰える。
最後だと言うのに。
本能的に貴方を求めてしまう。
自ら貴方を私から欠落させたというのに。

ねぇ?なんで貴方は私を置いて行っちゃったの?


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